喜多方市美術館の開設については、市内の美術団体や喜多方美術協会を始めとする市民各層からの永年に渡る要望を受けて、平成3年度(1991)の喜多方市蔵移築再生事業の一環として建築工事設計に着手しました。平成4・5年度(1992・1993)に展示室建築主体工事(木造平屋建)及び関連工事を実施し、次いで平成5・6年度(1993・1994)に収蔵庫・事務室(木造一部RC平屋建)の設計から建物主体工事及び関連工事を行い平成6年(1994)11月に竣工し、平成7年(1995)4月にオープンしました。また、美術館の外観は、喜多方市岩月町三津谷地区の農家作業蔵である煉瓦蔵(木骨煉瓦造)をモデルとして設計され、開館以来、地域文化の発信施設としての機能を果たしています。
喜多方市美術館は、福島県内の公立美術館では一番規模の小さな建物です。一般的に美術館の建物は、ホール、展示室、収蔵庫、来館者サービス及び管理スペースなど数多くの機能を持たせる為に大きな空間となります。当館の建物は、蔵のまち喜多方の街並みや景観に馴染んだ郷土・喜多方らしさを大切にしました。隣接する文化施設「蔵の里」の蔵群11棟と併せてご覧いただければと思います。
喜多方市には、大正から昭和初期にかけて、会津地方に来遊した画家をもてなし、制作支援や作品販売を目的とした画会を開催するなど、この地方における文化芸術の発展と普及に努めた歴史があります。大正7年(1918)1月の雪が降る日に、喜多方地方の素封家や画人たちは、「喜多方美術倶楽部」を組織しました。活動目的の一つに「行く行くは美術館を」という建築構想を持っていたと言われています。
この組織は残念ながら昭和の早い時期に解散していますが、先人たちの美術に対する思いが今に伝わり、地方の小都市には珍しい美術館の開設につながっているのです。