滝沢達史(アーティスト)

多摩美術大学油画専攻卒業。東京都特別支援学校にて知的障害児への美術教育に従事した後、越後妻有トリエンナーレなど国内の芸術祭に参加。ひきこもり・不登校の子どもたちとの活動(アーツ前橋)や、子どもの主体性に任せた表現活動(カマクラ図工室)などにも取り組んでいる。2018年4月に岡山県倉敷市真備町に子どもの学び場「ホハル」を開設。「喜多方・夢・アートプロジェクト2013/森ものがたり」では飯豊山登山を基にした映像作品「seou」を制作した。

概要

2014 年、喜多方を皮切りに始まった“子どもが主体的に関わる旅”は、今もカマクラ図工室で続けられています。滝沢の作品展示と合わせ、カマクラ図工室のこれまでの歩みを振り返りながら、美術から広がる学びについて考えました。
<喜多方美術倶楽部と大正浪漫展Ⅲ 記念事業>

展覧会

日 時:9月22日(土)〜 11月4日(日)9時〜17時
会 場:蔵の里 イベント蔵(喜多方市押切二丁目109)
観覧料:一般・大学生400(350)円、小・中・高生200(150)円
    ※()は美術館観覧券提示した場合の料金
来場者:1013名

展示内容

[1] 作品展示/教育基本法改定案/滝沢達史

誰もが関わる教育ですが、その法律を改めて垣間見る機会は少ないかもしれません。その文言は美しくもありますが、現状を振り返ったときには、遠い幻想のように見えます。滝沢はその中から個人の幸福だけに焦点を当て、高すぎる理想を削除することで、教育の本質について問いを投げかけました。

[2] 来場者の参加/教育をめぐる対話

来場者は用意された机に座り、質問用紙に答えることができます。「学校は変わるべき・少し変わるべき・変わらなくて良い・以上の理由」質問票は会場に貼られ、教育の問題について問い直す機会を与えました。

質問用紙

回答数:31

Q1 学校教育について、以下当てはまると思う方に丸をせよ。

 1、現状の教育で良いと思う。→0 2、変わるべき点があると思う。→29
 未回答→2

Q2 自身の経験で、学校教育の良かった点について書きなさい。

<一部紹介>

  • 学校の先生の雑談に本当の話があったと思います。
  • 共に切磋琢磨して学び会える。
  • 友だちとけんかできたこと よい先生と知り合えたこと
  • 先生は自由に授業が出来ゆとりがあった為、情熱も各々持っていた。
  • 先生が愛情をもってしかってくれた
Q3 自身の経験で、学校教育の改革に必要な点があれば書きなさい。

<一部紹介>

  • 教師、子どもの関係。教える、教えられるの関係ではない相互に学べる場
  • 個人の好きなこと、楽しいことに集中して取り組むことが出来たら幸せだろうな。何事もつながっていると思うから。人生に無駄はない!
  • 従来の通念上の規律とは違う規律があっても良いと教えるべき。不特定の「みんな」という言葉の使い方をまずやめてほしい。多様化を妨げている言葉だと思っている。
  • 一人を見つめるのか?全員を見つめるのか?先生が楽しくないのに子どもだって楽しくない。自身が小学校のことは先生も楽しんでいたように思う。
  • もっと周りの人と関わりを作るべき。タテのつながり、ヨコのつながりを作るサポートを大人たちがするべき。

[3] カマクラ図工室 これまでの歩み /映像15分

カマクラ図工室とは何か?その歩みの種子は10年前に遡ります。これまでの活動をわかりやすく紹介する映像を公開しました。

シンポジウム「教育とは何ですか?」

日 時:2018年9月23日(日)13時〜15時
場 所:蔵の里 イベント蔵(喜多方市押切二丁目109)
入場料:無料
参加者:18名

[1部] 講演「はみ出し部品~カマクラ図工室」13:00~14:00


子どもたちの自由な活動を大人たちが覚悟を持って見守る試みをしている「カマクラ図工室」。カマクラ図工室が生まれた経緯や、社会との関わりの中で子どもに成長の機会を与える活動の紹介を通して、現代社会の中で教育が抱える課題が語られました。

登壇 髙松智行(カマクラ図工室主宰、小学校 図工教諭)、滝沢達史(アーティスト)、岡田渉(小学校 社会科教諭)、吉坂保徳(小学校 理科教諭)、柚木恵介(アーティスト)

[2部] 座談会「教育とは何ですか?」 14:10~15:00


一部の内容を踏まえて、喜多方で教育に関わる方々や来場した地元の人々を交えて「これからの教育」についてディスカッションが行われました。見方や感じ方が違う様々な意見が交錯する中、「子どもにとっていろんな選択肢を学校外に設けること」が一つの指針として提案されました。

登壇 髙松智行、滝沢達史、岡田渉、吉坂保徳、柚木恵介、星久美子(子どもの居場所「れんが」副代表)、金澤文利(中学校 美術教諭)

シンポジウムのまとめ

カマクラ図工室は、2014年の喜多方合宿をスタートに毎年合宿を続けています。これまでの4年間、活動はアートから生活へと変化し、自分がしたいこと、そして責任について学んでいます。それは子どもだけでなく、大人も同じ立場で参加しており、責任について考える場面はとても多いです。「子どもへの要求を自分も行えているか?」教育の問題を考えるとき、我々大人の嘘がほとんどの害を生んでいるように思います。建前は必要な場合もありますが、建前しかない大人の態度に子どもたちは辟易しています。このシンポジウムでは、そのような議論が交わされ、内容はとても良いものでしたが、具体的な現場に繋げることが重要だと話されました。美術館に教育普及の枠組みが生まれれば現場との連携が取れるのではないか、シンポジウムではそのような議論へと繋がりました。

アーティスト報告

喜多方美術倶楽部100年を振り返るにあたり、子どもの活動という未来を取り上げていただいたことに感謝申し上げます。あれから4年が過ぎ、あの子どもたちは高校生になりました。早いもので、ともに社会を作る日も近いように思います。今回は喜多方の教育に関わる方々、またカマクラ図工室の教員でこれまでの活動を振り返る貴重な機会となりました。我々にとっては、これから先の4年を考える時間となり、新たなスタートを踏み出せた気がします。また4年後に新たな形で喜多方に還元できれば嬉しいです。課題として感じたのは、喜多方における美術館の役割が今後はさらに必要なことです。これは日本の美術館制度の課題ですが、地域の教育と美術館の取り組みが今後発展していくことを期待したいと思います。

9月21日 展覧会準備風景